AIエージェントが、データセンター建設を加速させている

シリコンバレーでは、AIの主戦場がシンプルなチャットボットから、より多くの計算資源を必要とするAIエージェントへと移りつつある。各社が巨大なデータセンターの建設を急ぐ背景には、そんな未来を見据えた動きがある。
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Photo-Illustration: Wired Staff; Getty Images

「一体、何のためにこれほど多くのデータセンターを建設しているの」。先日、いら立った様子の友人にそう尋ねられた。データセンターに関する疑問を抱いているのは、この友人だけではない。8月に『WIRED』US版が実施したライブ番組にも、同じような質問がいくつも寄せられた。もっともな疑問だ。

人工知能(AI)がすでに数々の画期的な成果を上げているのなら、なぜテック企業は数十億ドル(数千億円)規模の負債を抱え、世界最大級の発電所まで建設して、さらに多くのデータセンターをつくろうとしているのだろうか?

電力需要を押し上げるAIエージェント

データセンター建設が続くのは、一般の利用者がレシピを検索したり、旅行先を調べたりするのを助けるためではない。チャットボットへの簡単な問い合わせだけを基準に、AIの仕組みや必要とする資源を考えることは、すでに時代遅れになりつつある。

いまAIの中心にあるのはエージェントだ。確立された定義はないが、大まかに言えば、大規模言語モデル(LLM)を基盤に、自律的に判断してタスクを実行するよう設計されたシステムを指す。AIエージェントへの移行は、シリコンバレーで電力インフラの増強が進む要因のひとつになっている。

「AIチャットボットに単純な質問をして答えを得るのとは異なり、エージェントは利用者から受けた最初の依頼を基に、数百もの細かな指示を自ら生成できます」。数々のAIに関する記事を執筆している同僚、マックスウェル・ゼフはこう説明する。「例えば、AIエージェントにウェブサイトの構築を依頼すると、何時間も稼働し、その過程で自ら何十回も指示を出し直しながら、さまざまなウェブページやメニュー、サイトを支えるデータセットなどをつくり上げることがあります」

AIエージェントは現在、最先端のAI企業における開発の中核を担っている。そして、驚くべきこと、さらには恐ろしいことまで成し遂げ始めている。OpenAIは最近、1万を超えるAIエージェントが270万件のメッセージをやりとりし、長年にわたる数学上の難問を解いたと発表した(ただし、この主張には数学者から異論が出ている)。

これは例外的な事例ではある。AI企業は、解決不可能とも思われる問題に挑むことを重視し、そのために通常では考えにくいほど大量の資源を投入することもいとわない。それでも、270万件ものメッセージの処理には、膨大な計算能力が使われた。それに伴うエネルギー消費も莫大だ。正確な算出は難しいものの、ゼフによると、金額に換算すれば数千万ドル(数十億円)相当に上る可能性があるという。

「1回の問い合わせ」では測れない環境負荷

民間のAI企業はこれまで、自社製品の環境負荷に関する指標について、公表する情報を選別してきた。多くの最高経営責任者(CEO)は、資源の使用量を示す尺度として、個人が行なう1回の問い合わせを引き合いに出すことが多い。

OpenAIのサム・アルトマンは最近、ポッドキャストのインタビューで、アーモンド1粒の生産に使われる水の量は、ChatGPTへの約3万8,000回の問い合わせに相当すると主張した(ただし、この計算には異論が出ている)。

「アーモンドを一度に12粒も平らげる人のほとんどは、水の使用という点で、自分がひどいことをしているとは感じていません」とアルトマンは語った。しかし、単純な問い合わせよりはるかに多くのエネルギーを消費するAIエージェントまで考慮すると、こうした計算は格段に複雑になる。AIエージェントのエネルギー消費については、情報が著しく不足しているからだ。

エージェントに任せる作業は、簡単なタスクから、複数の「補助」エージェントを並行して動かし、丸一日かけて自律的にコードを書くものまで多岐にわたる。用途によって消費電力には大きな隔たりがあり、タスクが複雑になるほど、その消費量は際限なく増えていく可能性がある。

ひとりの背後で数千のAIが動く未来

「ほかのテクノロジー分野では、自動車を運転する人やNetflixを視聴する人の数によって、利用規模にはおのずと上限が生じます」と、調査・助言団体Sustainable AI Groupの共同創業者兼CEO、ボリス・ガマザイチコフは語る。

「ところがAIは、いまや利用者の数と切り離されつつあります。AI業界のリーダーたちの発言を聞く限り、そういうことを目指しているのでしょう。彼らは、従業員がひとりしかいないユニコーン企業について語っています」

正確に言えば、人間の従業員がひとりということだ。そのような世界が実現すれば、背後では数百、あるいは数千ものAIエージェントが働いている可能性がある。実現する可能性がどの程度あるかをここで論じるつもりはない。ただ、少なくともAI企業が目指しているのがそうした未来であり、それを踏まえれば、各社がデータセンターの建設を急ぐ理由も見えてくる。

各社がエネルギー消費について信頼できるデータをほとんど公表していないため、AIを積極的に利用する人々のなかには、自ら計算を試みる人もいる。気候科学者のジーク・ハウスファーザーは先月、AIエージェントを多用する自身のAI利用がどれほどのエネルギーを消費しているかを算出し、ブログで公表した。

複数の情報源を基に試算したところ、1日当たりの平均的な「Claude」の利用で、冷蔵庫2台を1日稼働させる以上のエネルギーを消費している可能性があるという。

(Sustainable AI Groupのガマザイチコフは、クローズドモデル上で動くAIエージェントの環境負荷について、今月中により精密な試算を公表する予定だ。ガマザイチコフは、ハウスファーザーの試算を意欲的な取り組みと評価する一方、やや古い研究結果を基にしていると指摘した。この分野の学術研究がまだ少なく、テック企業も排出量に関する指標をほとんど開示していないことを考えれば、無理もない)。

ハウスファーザーは、生活全体で考えれば、自身のAI利用によるエネルギー消費が、余分な冷蔵庫を数台動かし続ける程度であっても、世界を破滅させるような規模ではないと結論づけている。しかし、「世界の気温が急上昇し、排出削減目標の達成がますます遠のくなか、こうしたAI利用は新たな排出源となっている」ともハウスファーザーは記す。その規模は、アルトマンが指標として持ち出した「アーモンド1粒のごく一部」に相当する数字より、はるかに大きい。

数十億人の利用を支える巨大インフラ

ハウスファーザーは、自身がAIやエージェント型ツールを「大半の人より多く」利用していると語る。だが、一般の人々も近く同じように使うようになるかもしれない。

メタ・プラットフォームズは9月8日(米国時間)、パーソナルAIエージェント「Muse」の提供を開始した。同社はプレスリリースで、Museについて「世界中の数十億人のために働くよう設計されている」と説明している。利用者一人ひとりに「クラウド上の専用コンピューター」が割り当てられ、本人がオフラインの間も稼働するという。

メタは今年後半、MuseをAIグラスに統合する計画だ。近い将来、利用者はAIグラスやFacebookを何気なく使うだけで、自覚しないままAIエージェントに作業を任せるようになる可能性がある。

確かに、飛行機を頻繁に利用したり、牛肉を毎日食べたりする場合と比べれば、個人がAIエージェントを使うことによる温室効果ガスの排出量は、依然として比較的少ない。しかし、誰もがAIエージェントを使う未来をメタが描いているのなら、同社が建設する一部のデータセンターが途方もない規模に及ぶ理由も理解できる。例えば、ルイジアナ州で建設中の「Hyperion」には、10カ所の天然ガス発電所から電力が供給される予定だ。

「現在計画・建設されているデータセンターで訓練されるAIが登場するのは、3〜5年先です」とガマザイチコフは語る。「単なるチャットボットとは、まったく性質の異なるものになるでしょう」

(Originally published on wired.com, translated by Miki Anzai, edited by Mamiko Nakano)

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